全員がプログラミング言語を使いこなせる国へ――テックジム藤永氏の教育革命
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氏名 | 藤永端 |
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肩書 | テックジム株式会社 代表取締役 |
略歴 | 早稲田大学卒業後、i-modeのコンテンツ制作会社「エスクルー」を創業。続いてスマホアプリ開発会社「イーグル」を立ち上げ、2008年〜2010年頃にはiPhoneアプリ開発スクールを運営。その後はフリーランスとして多岐にわたる業務委託を手がけ、2019年に「テックジム株式会社」を創業。プログラミングスクールのフランチャイズ展開を全国30拠点で行い、延べ22,000名が受講する「ゼロからはじめるPython入門講座」を50都市で開催。2021年には業務改善ツールの売買プラットフォーム「GASスタンド」をリリース。 |
趣味 | ギター |
特技 | 特技……「バク転」です。友人がFC展開している教室に通っていて、練習しています。 |
—【編集部】これまでどんな事をされてきましたでしょうか。
—【藤永】
大学在学中、同級生から「一緒にやらないか?」と声をかけられたことがきっかけで起業の道に進みました。彼は学生のうちからイベント企画などを行い、多彩な業界とのつながりを持っていました。面白そうだと思い合流して始めたのが、当時のガラケー向けサイトの制作・運営事業です。
最初はPHPやMySQLを使ってi-mode向けのサイトを作り、学生エンジニアと一緒に試行錯誤しながら受託案件を回していました。営業は出資してくれた年上の社長が取りまとめ、私たちはディレクションやプログラミングの実務を担う流れです。
そこで痛感したのは「プログラミングをしっかり学んで、エンジニアを育てる体制づくりが重要」ということでした。これが結果的に後のスクール事業やプログラミング教育につながっていったんです。
1社目の事業を経た後は一時的にフリーランス的な形で、人材紹介やSEO対策の手伝い、イベント運営などを幅広く請け負っていました。その中で「これからスマホが来るぞ」という予感を得て、2010年頃、スマホが本格普及し始める前にイーグルを立ち上げ、iPhoneアプリの開発スクールを始めました。
3年ほどスクールを運営した後、2015〜2016年頃に会社は畳んだのですが、またフリーランスとしていろいろなプロジェクトを経験し、「やはり教育事業に本質的な意義がある」と再認識しました。
—【編集部】現在の会社を創業した経緯をお聞かせください。
転機になったのは、ある会社にマーケティング担当として参画していた時期です。そこではCTOが学生向けにJavaScriptを使った勉強会を毎週開いており、「オブジェクト指向」や「クラス」「関数」など基礎的な概念をじっくり教えていました。
以前、自分がスクール事業をしていたときは、PHPやSwiftといった“実践的”な技術から入ることが多かったんですが、それよりも「基礎をしっかり抑えればどの言語にも対応できる」ということに気づきました。そこで「基礎に特化したスクールがより多くの人の役に立つのではないか」と考え、まずは教材を作り、「ゼロからはじめるPython入門講座」をオープン講座として試験的に開催してみました。
すると、想定以上に幅広い方々、老若男女を問わず多くの参加があり、「エンジニア志望以外にも、プログラムに少し触れたいニーズが非常に高い」と実感しました。そこで2018年末から教材をさらに整備し、2019年4月に本格的に「テックジム」として立ち上げました。
初月から30名ほどが受講し、月額2万2000円の料金モデルでスタートしました。AI関連のカリキュラムも追加しようと計画していて、年末には50名ほどに受講生が増えたんです。順調に100名、200名と伸ばしていける手応えがありましたが、コロナ禍による影響で大手スクールも含めて大きく落ち込みました。うちも一時は100名ほどいた受講生が30名程度に減りましたが、2023年頃から少しずつ戻り始めています。
一時は他の言語やスマホアプリ開発講座などを大幅に拡充しようとしましたが、結果的にプログラミングの基礎に特化するスタイルこそがテックジム方式の原点だと再確認しています。
—【編集部】今、どんなコトを任されていますか?
—【藤永】
現在は「月額制コース(週1回、土日に集まる形式)」を続けつつ、「1日講習会」や「20日講習会」のような短期集中型のプログラムも拡充しています。特に学習初期の“つまずき”を乗り越えるためには、コーチングがとても重要だと考えていて、私自身が直接コーチングを行う場面も増やしています。
以前は副業エンジニアを講師として集め、標準化した教材を使えばある程度対応できるだろうと考えていました。しかし実際には「学習者の行き詰まりを察知し、最適なタイミングで介入する」ことが必要で、これは必ずしも“現役エンジニア”であるかどうかより、コーチングスキルの方が鍵になるんだと学びました。
—【編集部】会社や事業のどんなところを魅力的に感じられていますか?
私の夢は「日本人全員がプログラマーになる」ことなんです。シリコンバレーは“勝手に人が集まる場所”と言われますが、実は意図して作られた側面もあります。日本も同じように環境を整えれば、シリコンバレーのようなイノベーション拠点を生み出せるはずです。
特に日本は、治安やインフラの面で非常に恵まれています。江戸時代、識字率の高さが経済的発展につながったように、「プログラミングリテラシーを持つ日本人が増えれば、国力はさらに上がる」と本気で思っています。
—【編集部】さて、ここで少し流れを変えて「20問20答」をさせてください。 私が質問を投げますので、考えずに、正直に、スグに答えてください。
Q1. 好きな漫画は?
A1. サスケ
Q2. 人情派? 理論派?
A2.理論派ですね。
Q3. パン派ですか? ライス派ですか?
A3.ライスです。
Q4. 都会が好きですか? 田舎が好きですか?
A4. 田舎ですね。
Q5. 保守的? 革新的?
A5. 革新的ですね。
Q6. 好きなミュージシャンは?
A6.ジミ・ヘンドリックスです。
Q7. これまでに仕事でやらかした一番の失敗は何ですか?
A7. 泥酔状態で打ち合わせに参加したこと
Q8. 犬派? 猫派?
A8.両方好きです。
Q9. 現実派? 夢見がち?
A9.夢見がちです。
Q10. 今、一番会いたい人は?
A10. 吉田松陰です。
Q11. 仕事道具でこだわっているのは?
A11. 毎日モニターを拭く。イチロー選手がグラブを磨くのと同じ感覚です。
Q12. どんな人と一緒に仕事したいですか?
A12.笑いのセンスが良い人
Q13. 社会人になって一番心に残っている言葉は?
A13.運は人が連れてくる。
Q14. 休日の過ごし方は?
A14.居酒屋で焼き鳥を食べる。特にねぎまが好きです。
Q15. 好きな開発言語は何ですか?
A15. Python
Q16. 仕事の中で一番燃える瞬間は?
A16. 講座に人が集まるときですね。
Q17. 息抜き方法は?
A17. 散歩です。
Q18. 好きなサービスやアプリは?
A18.YouTubeです。
Q19. 学んでみたいことは?
A19.新しい技術全般。常にキャッチアップしたい。
Q20. 最後に一言
A20.とにかくプログラミングを学んでほしい。日本人全員がプログラミングを理解できれば、日本はもっと強くなれると思います。
—【編集部】現在の会社で何を成したヒトと記憶されたいですか?
—【藤永】
私が尊敬している方に、公文式を生み出した公文公さんと、武田塾創業者の林尚弘さんがいます。公文公さんは、「1+1」「1+2」のように、段階的かつ革新的な学習法で数学の教育に革命をもたらした方ですよね。林尚弘さんは、よくお会いしていますが、管理の重要性を強く説いている方です。「授業をすることよりも、管理が大事なんだ」という考え方ですね。あれはまさにコーチングの手法です。教育の分野に革命をもたらしたと言えるでしょう。
プログラミング教育の分野でも、そうした“元祖”と呼ばれるような教育者がまだ存在していないと感じています。
Rubyの松本行弘さんのように、卓越したエンジニアとして有名な方はいますが、林修さんのように「教育者」としてメジャーになったプログラミング指導者はいない。私が目指すのはそこなんです。私自身が「日本人全員をプログラマーにする」教育モデルを確立して、プログラミング教育に革命を起こしたと言われるようになりたいですね。
—【編集部】最後に同様のキャリアを目指される方にアドバイスはありますか?
—【藤永】
私自身、まだ「成功しきった」というわけではなく、むしろ失敗をたくさん経験してきました。しかし、その中で学んだのは「諦めないことこそが本質的に大事」ということです。特にプログラミングの習得や起業は、途中で挫折しやすいものですが、とにかく続けるしかない。
エンジニアを集めたり、育成できるかどうかは企業経営における勝敗を分ける大きなポイントです。エンジニアを武士や兵力に例えるなら、経営者が彼らを尊重しながら同時に自分もプログラミングを理解している、そんな関係性を築けると強い組織になると思います。陣頭指揮を取れる社長、そして「すべて自分の責任だ」と言えるリーダーは、エンジニアたちからも信頼されるはずです。
みんなプログラミングを学んで、エンジニアから愛される経営者になってほしいですね。一方でエンジニアをただ持ち上げるだけではダメで、経営者としてもプログラミングの知識を身につけるべきです。エンジニアと対等な関係を築くためにも、知るべきことは知り、言うべきことは言う。そんな経営者を目指してほしいです。
【クレジット】
・取材・撮影・文/平林宏城 企画・構成/大芝義信
【スポンサー】
・エンジニア組織のハードシングスのご相談は「株式会社グロースウェル」
企業 | テックジム株式会社 |
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